昇格試験の中でも、面接は多くの会社が取り入れている形式です。管理職に上げるときの試験やアセスメントの中身を、実施している企業に聞いた調査があります。面接が80.8%で、筆記・論文・レポートの71.5%を上回りました(労務行政研究所、2022年、197社)。
面接の質問は、会社ごとに違って見えます。ただ、評価する側が確かめたいことは、大きく5つの系統に分けられます。この記事では、系統ごとに「何を確かめているか」と「ずれやすい答え」を説明し、準備の手順をまとめます。
※この記事に出てくる人物と答えの例は、説明のために作った架空のものです。
面接官は「答え」より「答え方」を見ている
昇格面接は、知識の試験ではありません。評価する側は、その人が上の役職に就いたとき、どう考えて動くかを、話の中から確かめようとします。
そのため、1つの質問に答えると、次のような深掘りが続きます。
- 具体的には、どういうことですか
- なぜ、そう判断したのですか
- その中で、あなたの役割は何でしたか
- 数字で言うと、どのくらいですか
- 次に同じ状況になったら、どうしますか
最初の答えがきれいでも、深掘りで中身がなくなると、評価は下がりやすくなります。準備では、質問ごとに「深掘りされても話せる材料」をそろえておくことが大切です。
よく聞かれる5つの系統
1. これまでの実績
「これまでの仕事で、いちばんの成果は何ですか」という形で聞かれます。
確かめていること:成果そのものより、その成果に自分がどう関わったかです。課題をどう見つけ、誰を巻き込み、何を決めたかを見ています。
ずれやすい答え:チームの成果を「私たちは」で語り、自分の役割が見えない答えです。数字が出てこない答えも、深掘りで詰まりやすくなります。
2. 昇格後の抱負
「課長になったら、何をしたいですか」「なぜ昇格したいのですか」と聞かれます。
確かめていること:上の役職の役割をわかっているかどうかです。自分が頑張る話ではなく、部署やチームの成果をどう上げるかを話せるかを見ています。
ずれやすい答え:「もっと成長したい」「責任ある立場で頑張りたい」のような、本人の気持ちだけの答えです。当サイトで読んだ知恵袋の質問にも、「なぜ主任になりたいのか」「昇格したら会社は何がうれしいのか」に答えられない、という悩みがありました。
3. 自部署の課題
「今の部署の課題は何だと思いますか。あなたならどうしますか」と聞かれます。
確かめていること:組織を一段上の目線で見ているか、課題に対して実行できる手を考えられるかです。
ずれやすい答え:課題を挙げるだけで、手が書いていない答えです。会社や上司への不満に聞こえる言い方も避けます。
4. 失敗の経験
「仕事で失敗したことと、そこから学んだことを教えてください」と聞かれます。
確かめていること:失敗を自分のこととして受け止め、次の行動を変えたかどうかです。
ずれやすい答え:失敗の原因を他の人や環境に置く答えです。学んだことが「気をつけるようになった」で終わる答えも、深掘りで詰まりやすくなります。
5. 部下・後輩の育成
「部下や後輩を、どう育ててきましたか」と聞かれます。
確かめていること:人に任せて育てる考え方を持っているかどうかです。自分でやったほうが早い仕事を、あえて任せた経験があるかを見ています。
ずれやすい答え:「丁寧に教えた」で終わり、相手がどう変わったかが出てこない答えです。
架空の例:「なぜ課長になりたいのですか」
メーカーの営業係長のBさん(38歳)は、部長に言われて課長の試験を受けることになりました。Bさんの最初の答えは、次のようなものでした。
係長として5年たち、もう一段上の立場で成長したいと考えました。
評価する側から見ると、これは本人の気持ちの話です。課長として何をする人なのかが見えません。Bさんは、自分の材料を次のように並べ直しました。
- 今のチームで、新人の立ち上がりに半年かかっている(事実)
- 係長の立場では、育成の仕組みを変える権限がない(今の限界)
- 課長になったら、3か月で一人立ちできる育成の流れを作りたい(したいこと)
この3つの材料があれば、「具体的には」「数字で言うと」と深掘りされても話を続けられます。言い回しを覚えるより、材料をそろえるほうが、本番では崩れにくくなります。
準備の手順
- 材料のカードを5枚作る。実績、課題、失敗、育成、昇格後にしたいこと。それぞれに「事実」「自分の役割」「数字」を1行ずつ書きます。社名や人名は伏せます。
- 1分で話す練習をする。結論、理由、具体例の順で、1分に収めます。長い答えは、面接官の深掘りの時間を奪います。
- 深掘りを3段まで想定する。カードごとに「具体的には」「なぜ」「次に同じ状況なら」と自分に問い、答えを書いておきます。
- 声に出して確かめる。頭の中で準備した答えは、口に出すと詰まることがあります。当サイトで読んだ体験記にも、面接で頭が真っ白になった、何を言ったか覚えていない、という振り返りがありました。声に出す練習は、緊張への備えにもなります。
緊張が強い人向けの準備は、面接で頭が真っ白になる人の準備にまとめました。
答えを点検する5つの問い
準備した答えは、次の5つの問いで見直します。1つでも「いいえ」があれば、材料のカードに戻って足します。
| 問い | 「いいえ」のときに足すもの |
|---|---|
| 最初の一文で結論を言っているか | 結論を前に出す |
| 「私は」で始まる行動が入っているか | 自分の役割と判断 |
| 数字が1つ以上入っているか | 期間、件数、割合など |
| 上の役職の目線で話しているか | 部署やチームへの影響 |
| 社名や人名、社外秘の情報を避けているか | 伏せ字や一般的な言い方 |
丸暗記した文章は、緊張すると途中で抜け落ちます。覚えるのは文章ではなく、カードの材料と話の順番にとどめます。
答えに詰まったときの立て直し方
準備をしていても、思ってもみない質問は来ます。詰まったときに黙り込んだり、思いつくままに話し続けたりすると、答えの中身より慌てた様子が残りやすくなります。
詰まったときは、次の順で立て直します。
- 質問を言い直して確かめる:「部署の課題として、人の面でということでしょうか」と聞き返します。考える時間ができ、ずれた答えも防げます。
- 数秒もらう:「少し考えさせてください」と断ってから考えるのは、失礼には当たらないと考えられます(推測)。
- 材料のカードに戻る:新しい話を作ろうとせず、用意した5枚のどれが使えるかを考えます。実績や失敗の事実は、多くの質問に使い回せます。
それでも答えが出ないときは、分からないことを正直に言い、「今の自分ならこう考える」と一言添えます。知ったふりをして話を広げると、深掘りで崩れます。
面接の前日に見直すもの
前日は、新しい答えを作るより、手元の材料を確かめる時間にします。
- 5枚の材料カードと、そこに書いた数字
- 受ける役職の役割(会社の資料に書かれていれば、その言葉)
- 自分の部署の今年の目標と、その進み具合
部署の目標や数字は、抱負や課題の質問で使います。うろ覚えの数字を話すと、深掘りで食い違いが出るので、前日に確かめておきます。
一人で練習するときの限界
深掘りは、相手がいないと練習しにくい部分です。社内の人に頼みにくいときは、外の練習相手を使う方法もあります。
昇格パスの無料体験では、昇格面接の3問(実績・抱負・マネジメント)を文字で練習できます。答えると「具体的には」などの深掘りの質問が続き、終わると評価票で、観点ごとの評価と根拠になった発言を確かめられます。
匿名で使え、会社に知らせることはありません。材料のカードを作ったら、一度試してみてください。
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