昇格試験やアセスメントで、メールやメモの束を限られた時間で処理する演習が出ることがあります。いわゆるインバスケット形式と呼ばれるものです。昇格パスでは、この形式の演習を「案件処理演習」と呼んでいます。
公開されている教材の説明には、60分または90分で20件の案件を処理する形があります。架空の人物になりきり、着任したばかりの職場で、上司や部下、顧客からの案件をさばきます。
当サイトでは、この演習についての知恵袋の質問15件を読みました。いちばん多いつまずきは「時間が足りない、全部に手を付けられない」で、4件でした(2026年10月)。
件数は検索語の選び方に左右されるので、よくある悩みの種類として見てください。この記事では、時間の使い方と、1件ごとの書き方を説明します。
※この記事に出てくる会社、人物、案件は、説明のために作った架空のものです。
評価する側は「行動」を数えている
この演習の採点では、答えの中から管理職らしい行動を拾い、観点ごとに点を付ける方式がよく説明されています。観点の名前は提供元ごとに違いますが、おおむね次のようなものです。
- 問題に気づく(隠れた問題、関連する案件)
- 原因を考える
- 決める(保留するなら理由を書く)
- 段取りを組む(誰が・何を・いつまでに)
- 優先順位を付ける
- 人に任せる、上司に報告する
- 相手に配慮する
- 先を読む、再発を防ぐ
ここから言えるのは、きれいな文章より「行動が書かれているか」が大切だということです。1件に長い文章を書くより、必要な行動を短く書いて、多くの案件に手を付けるほうが点になりやすいと考えられます(推測)。
案件の前に、設定の資料を読む
この形式の演習では、案件の束とは別に、設定の資料が付いていることがあります。自分の役職、組織図、今日の日付、予定表、自分が不在になる期間などです。
設定の資料は読み飛ばしやすいのですが、優先度の判断の土台になります。次の3つは、案件を読む前にメモしておきます。
- 今日の日付と曜日、自分が席を外す期間
- 仕事を任せられる部下と、その人の今の状況
- 連絡が取れる上司と、取れない人
日付が分かっていないと、「金曜まで」が何日後なのかを案件ごとに数え直すことになります。
最初の10分:全件に目を通し、優先度を付ける
時間切れの多くは、1件目から順番に、全力で書き始めることから起こります。最初の10分(60分の場合)は、書かずに読むことに使います。
- 全件の件名と差出人に目を通す。1件に20〜30秒が目安です(10分で20件に目を通す場合の計算)。
- 優先度を4つに分ける。A:今日中に自分が動く、B:今日中に人に任せる、C:急がない、D:処理しなくてよい。
- 関連しそうな案件に印を付ける。同じ人、同じ顧客、同じ日付が出てくる案件は、つながっていることがあります。
- 使えない人を確かめる。休暇中、出張中の人に仕事を任せないためです。
優先順位は、1番から20番までの順番を当てるものではない、という説明がよくあります。グループとして大きくずれていないかが見られる、という考え方です(公式の基準ではありません)。そう考えると、迷う時間が減ります。
グループの分け方と、グループの中の順番の決め方は、案件処理演習の優先順位で詳しく説明しています。
1件の書き方の型
1件ごとの答えは、次の順で書くと、行動が抜けにくくなります。
- 判断:どうするかを一言で決める
- 指示:誰に、何を、いつまでに
- 報告の受け方:いつ、どの形で結果を受けるか
- 理由:なぜそう判断したか(短く)
「確認します」「検討します」で終わる答えは、決めていないと見られやすくなります。確かめる必要があるときも、「誰に、何を、いつまでに確かめ、その結果でどう決めるか」まで書きます。
架空の例:顧客からの納期の問い合わせ
場面:精密部品メーカーの営業課長に着任した初日です。案件の1つは、取引先の購買担当からのメールで、「来週納品予定の部品が、今週中に必要になった。対応できるか」というものです。別の案件には、製造部からの「来週は設備の点検で生産量が落ちる」という連絡があります。
よくある答えは、次のようなものです。
製造部に確認し、対応できるか検討します。
評価する側から見ると、判断も期限もなく、関連する製造部の案件にも触れていません。型に沿って書き直すと、次のようになります。
判断:今週中の一部納品を目指す。 指示:担当のEさんに、今日15時までに製造部と出荷可能な数量を確かめるよう依頼。点検の連絡(別の案件)も踏まえて調整すること。 報告:今日16時に結果をメールで受け、自分から先方に回答する。 理由:取引先の生産に関わるため、まず数量の見通しを早く伝える。
長さは2倍ほどですが、判断、指示、期限、報告、関連案件への気づきが入っています。
関連する案件の見つけ方
この形式の演習では、別々に見える案件が、実はつながっていることがあります。つながりに気づき、答えの中で結び付けると、問題に気づく力や先を読む力として見られやすくなります。よくある組み合わせは次の3つです。
- 現象と原因:顧客からの苦情と、部下の報告の中の一文がつながっている
- ぶつかり合い:同じ日時に2つの会議が入っている。同じ部下に2つの仕事が頼まれている
- 後からの訂正:後の案件で、前の案件の前提(予算、日程)が変わっている
最初の10分で印を付けた案件どうしを、書く前にもう一度並べて読みます。答えには「案件〇と関連」のように、つながりを一言書き添えます。
上司への報告・相談を入れる
案件の中には、自分の権限だけでは決めきれないものがあります。予算の大きい支出、他部署の方針に関わること、顧客との契約の条件などです。
こうした案件で、自分だけで決めてしまうと、組織の動かし方として見落としがあると読まれるおそれがあります。逆に「上司に相談します」だけでは、決めていない答えになります。
上司に上げる案件は、次の3つをそろえて書きます。
- 自分の考え(どうしたいか、その理由)
- 上司に決めてほしいこと(何を、いつまでに)
- 返事を待つ間に、自分の権限で進めておくこと
演習の設定で上司も不在のことがあります。その場合は、メールで報告する、代わりに判断できる人を確かめる、といった連絡の手段まで書いておきます。
処理しなくてよい案件は短く
案件の中には、処理の要らないものや、件名ほど急がないものも混ざっています。こうした案件は一行で済ませます。見分け方と書き方は、「処理しなくてよい案件」と「急がない至急」を見分けるで詳しく説明しています。
残り時間の配分(60分の場合の目安)
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜10分 | 全件に目を通し、優先度と関連の印を付ける |
| 10〜40分 | A と B の案件を型に沿って書く |
| 40〜55分 | C の案件を短く書く。D は一行で済ませる |
| 55〜60分 | 書き漏れの確認。関連案件を答えの中でつないだか見直す |
これはあくまで目安です。90分の試験なら、各段階を1.5倍にして考えてください。
型は、手を動かして身につける
1件の書き方の型は、読んで理解するだけでは本番で出てきません。時間を計り、書いて、足りない行動を確かめる、という練習を数回くり返すと、手が覚えます。
昇格パスの無料体験では、案件処理演習の1案件を5分で練習できます。書き終えると評価票が出て、観点ごとの評価と、根拠になった自分の記述を確かめられます。
匿名で使え、会社に知らせることはありません。まず1件、型を試してみてください。
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