昇格試験を受けるかどうか迷うとき、周りの人がどう考えているのかは見えにくいものです。社内で「管理職になりたいですか」と聞いて回るわけにもいきません。
この記事では、昇格と昇進にかかわる数字を、調査主体の一次資料で確かめて並べました。どの数字も、2026年10月6日に出典のページや資料を開いて確かめたものです。
報道やまとめ記事でしか確かめられなかった数字は、使っていません。数字を読むときの注意と、架空の例での読み違いの直し方も添えました。
※この記事の例に出てくる人物は、説明のために作った架空のものです。
1. 管理職になりたい人は多くない
管理職になりたい人の割合を、国ごとに比べた調査があります。18の国と地域で、日本は19.8%で最も低い結果でした(パーソル総合研究所、2022年、各国約1,000人の就業者)。最も高いインドは90.5%、ベトナムは87.8%でした。
国内の会社員に聞いた調査もあります。
日本能率協会マネジメントセンターの調査(2023年4月)は、従業員300名以上の企業の一般社員1,116名が対象です。そのうち約77.3%が「管理職になりたくない」と答えました。同社が2018年に行った調査では72.8%で、それより高くなっています。
すでに管理職になった人に聞いた調査もあります。
日本経営協会の調査(2025年10〜11月)では、部下を持つ課長級から部長級の539人に聞いています。昇進を自分から希望したのは、21.0%でした。47.1%は、特に希望せず流れの中でなった、と答えています。
乗り気ではないまま受ける人は、少数派ではないと考えられます(推測)。気持ちが乗らないことを、準備をしない理由にしなくてよい、という見方もできます。
2. 役職と年齢、月給
厚生労働省の統計で、役職ごとの平均年齢と月給を見ると、次のとおりです(令和7年賃金構造基本統計調査、2025年6月分)。
| 役職 | 平均年齢 | 所定内給与(月額) | 非役職者を100としたとき |
|---|---|---|---|
| 非役職者 | 41.8歳 | 31万500円 | 100 |
| 係長級 | 45.4歳 | 39万9,200円 | 128.6 |
| 課長級 | 49.5歳 | 52万9,200円 | 170.4 |
| 部長級 | 53.1歳 | 63万5,800円 | 204.8 |
対象は、10人以上を雇う民営の事業所で働く、雇用期間の定めのない一般労働者です。平均年齢は、その役職に今いる人の平均です。何歳で昇進したかを表す数字ではありません。
所定内給与には、残業代と賞与が入っていません。課長になると残業代の扱いが変わる会社では、実際に受け取る額の差は、この表より小さくなることがあります。詳しくは昇格すると給料はどう変わるかにまとめました。
3. 昇格に試験を使う会社
労務行政研究所の調査(2022年1〜3月、回答197社)を見ます。一般社員から管理職に上げるときに、試験やアセスメントを「実施している」企業は66.3%でした。
実施している企業での中身は、面接が80.8%、筆記試験・論文・レポートが71.5%でした。試験の形の組み合わせ方は、昇格試験の形式を知るで説明しています。
民間企業の昇格試験の合格率を、全国でまとめた公的な統計は見つかりませんでした。「昇格試験の合格率は〇割」という話を見かけたら、出どころを確かめてください。
4. 公務員の昇任選考:東京都の例
公務員は、昇任選考の結果を公表している所があります。東京都が公表した令和6年度の実績から、3つを抜き出しました(「令和7年度 東京都人事行政の運営等の状況」)。
| 選考 | 受験者 | 合格者 | 合格率・倍率 |
|---|---|---|---|
| 主任級職選考 種別A | 1,916人 | 975人 | 合格率50.9% |
| 管理職選考 種別A(主任級の職員が対象) | 683人 | 60人 | 合格率8.8% |
| 公立学校の教育管理職選考(合計) | 700人 | 506人 | 倍率1.4倍 |
管理職選考の合格者は、一次選考の合格者を指す、と資料に注記があります。種別Aは、その後の判定を経て最終の合格になります。
同じ自治体の中でも、選考によって数字の開き方が大きく違います。ほかの自治体の数字とは、選考の作りも対象も違うので、そのまま比べないでください。
表から言えること、言えないこと
主任級職選考の種別Aでは、受験した人のおよそ半分が合格しています。管理職選考の種別Aでは、一次選考の段階で、受験した人のおよそ11人に1人です(683人のうち60人から計算)。
一方で、この表から、自分が受かる見込みはわかりません。準備の度合いも、勤務の評定も、人によって違うからです。
合格率が高い選考でも、準備をせずに受ければ落ちることはあります。低い選考でも、毎年受かる人がいます。数字は、選考の厳しさの目安として見るのがよいと考えられます(推測)。
5. 管理職になった後の負担
日本経営協会の同じ調査では、管理職の86.8%が、プレイヤーとしての業務を兼ねていました。管理の仕事だけに専念している人は少ない、ということです。
少し古い調査ですが、パーソル総合研究所が2019年3月に、従業員50人以上の企業の管理職2,000人に聞いています。52.5%が、自分の業務量が増えたと答えました。
こうした負担を知ったうえで受けるかどうかは、人それぞれです。受けると決めた場合、面接で「大変な役職ですが」と聞かれたときの材料にもなります。
数字を読むときの4つの点検
調査の数字は、読み方を誤ると、自分の判断をゆがめます。次の4つを確かめてから使います。
- 誰に聞いたか:一般社員か、管理職か。会社の規模の条件はあるか
- 何人に聞いたか:数十人の調査と1,000人の調査では、重みが違う
- いつの数字か:年によって変わる。古い数字は今と違うことがある
- 母数は何か:「実施している企業の中で」なのか、「回答した全社の中で」なのか
この記事の数字も、この4つを本文か出典の欄に書いています。
たとえば、1章の77.3%は一般社員に聞いた数字で、21.0%はすでに管理職になった人に聞いた数字です。同じ昇進の意欲の話でも、聞いた相手と時期が違います。2つを並べて、意欲が増えた、減ったとは言えません。
架空の例:数字の読み違いを直す
場面:電機メーカーの設計部で働くQさん(39歳)は、課長の試験を受けるよう言われました。迷っていたとき、ネットで見かけた数字から、次のように考えました。
管理職になりたくない人が8割近くいる。受けても受けなくても、大して変わらないのでは。
評価する側から見ると、この考えは試験とは関係がありません。けれども、Qさん自身の準備の気持ちを下げてしまいます。77.3%は従業員300名以上の企業の一般社員の答えで、Qさんの会社の受験者の気持ちを表す数字ではありません。
直し方は、数字を自分の判断の材料に置きかえることです。Qさんは、自分の会社の制度で確かめることを書き出しました。
- 課長になると、月給と残業代はどう変わるか(人事の資料で確かめる)
- 試験の形式は何か(受験の案内で確かめる)
- 今年受けない場合、次はいつ受けられるか
この3つは、どれも人事の資料や受験の案内で確かめられます。統計の数字と違い、Qさん自身に当てはまる事実です。
統計は、世の中の傾向を知るのに役立ちます。受けるかどうかは、自分の会社の事実で決めるほうが、迷いが少なくなると考えられます(推測)。
受けると決めたら
数字を見て受けると決めたら、次は試験の形に慣れることです。形式を知らないまま本番に入ると、力を出しきれないことがあります。
昇格パスの無料体験では、部下面談1場面、昇格面接3問、案件処理演習1案件を、文字で練習できます。終わると評価票で、観点ごとの評価と、根拠になった自分の発言や記述を確かめられます。
匿名で使え、会社に知らせることはありません。
関連する記事
- 昇格試験の形式を知る:面接・論文・アセスメントの組み合わせ
- 昇格すると給料はどう変わるか:役職ごとの月給と、残業代の扱い
- 「なぜ管理職(主任・係長)になりたいのか」に答えにくい人の準備